東京高等裁判所 平成10年(う)710号 判決
被告人 齋藤正之
〔抄 録〕
論旨は、原判示第三の事実につき、被告人は和姦の意思であり強姦の犯意はなかったのに、これがあるとして強盗強姦未遂の事実を認定している原判決には、事実の誤認があるというのである。しかし、被告人の控訴趣意には、右論旨を根拠づける訴訟記録及び原裁判所において取り調べられた証拠に現われている事実の援用がされていないし、所論指摘の事実は、原審において主張されておらず、原審においては、被告人は事実を認め、関係証拠を同意の上取調べをしており、右控訴趣意に沿う証拠は見当たらない。所論が、右の点につき原審で主張、立証できなかった理由として挙げているところは、被害者を証人として尋問することを避けるという警察官との約束があったために、被害者の供述調書の取調べに同意し、強姦の犯意を争わなかったという趣旨にとどまるのであって、これをもって、右の点につき原審で主張立証することができなかったことにつきやむを得ない事情があったものとはいえない。したがって、所論は、控訴趣意として不適法である。
(佐藤文哉 小出[金享]一 波床昌則)